ブリジット・ルシール・アライン・サイロネス・カタラン(精神と文化をつなぐ:ミンダナオから日本への私の学術的旅路)
私が日本に来たときの感情を、今でもはっきりと思い出すことができます――それは、身震いでした。私は、教育、研究、革新において卓越性を際立たせている学術大学の一つで、私の専門的成長を続けるためにここにいます。幸運にも、私はミンダナオ-日本科学技術プログラム(MJ-STeP)によって提供された奨学金を授与されました。私はフィリピンのミンダナオ南部、ダバオ地方出身のフィリピン人です。現在、東北大学大学院農学研究科の「人間の安全保障のための食料と農業プログラム(Food and Agriculture for Human Security Program)」において、農業経済学の博士号取得を目指しています。本稿では、私の学術的旅路、研究、そして日本での生活、さらにこれらの経験がミンダナオの発展にどのように貢献するかについて紹介します。
私はミンダナオにおける主要な教育機関の一つである「フィリピン南東大学(University of Southeastern Philippines)」の一員であることを誇りに思っています。農学及び関連科学部の農学科の教員の一人として、私たちの主要な役割は教育のみならず、各自の専門分野における様々な研究活動及び地域貢献活動にも参画することでもあります。私の仕事は、限られた資源の適切な管理、気候変動の影響に対する適応能力とレジリエンス(回復力)、そして持続可能性に向けたフィリピン農民のエンパワーメントに焦点を当てています。これらは、農業の課題、問題、ギャップ及び発展に取り組むという私の情熱と一致しており、ミンダナオのみならず、フィリピン全体における経済システム全体に確実に影響を及ぼすものです。

先述の通り、私は現在、東北大学の青葉山キャンパスに所属しています。私の研究期間は2025年10月(第2学期)に始まり、2027年4月(第1学期)まで続きます。研究活動に加え、いくつかの講義科目も履修しなければなりません。この期間中、私は博士号の取得を目指しており、それによって私の故郷地域に貢献できる高度な知識と技能を身につける予定です。私の研究テーマは、「フィリピン・ダバオ地域における規格外(オフグレード)キャベンディッシュバナナ利用の食料安全保障及び経済的持続可能性における役割(Role of Off-grade Cavendish Banana Utilization in the Food Security and Economic Sustainability of Davao Region, Philippines)」に焦点を当てています(*注)。この研究は、規格外バナナの利用による市場機会の拡大、付加価値創出、廃棄物削減戦略への影響の分析により、これが食料安全保障の強化と経済的持続可能性の促進に如何なる貢献を果たすかを評価することを目的としています。ミンダナオ、特にダバオ地域におけるキャベンディッシュバナナ産業は、輸出市場に大きく依存しており、価格変動、厳格な品質基準、激しい競争による市場リスクと不確実性に対して脆弱です。規格外キャベンディッシュバナナの効率的利用による地域内消費の強化は、輸出市場の不確実性を緩和するための余裕を付与することになります。さらに、規格外バナナを活用した副産物開発を最適化することは、地域の食品システムの拡大及び食品廃棄物の削減の可能性を提供し、食料安全保障と経済的持続可能性を確保します。したがって、この取り組みは農業経済に貢献し、ミンダナオのバナナ産業における農民及びその他のステークホルダーたちの持続可能な生計を支えることにもつながります。 (*注)規格外(オフグレード)バナナ:輸出市場向けの品質基準を満たさないバナナ

日本での生活は、非常に実り多い経験となっています。東北地方に位置する宮城県仙台市は「杜の都」として知られ、豊かな緑の景観で有名です。私はいくつかの森林公園、寺院、自然景観、湖の探索を楽しみ、また、ラーメン、寿司、抹茶、そして有名な牛タン(炭火焼き牛タン)といった地元の食べ物を試してきました。日本文化に適応することは、コミュニケーション、規律、社会的礼儀作法の面で、挑戦であると同時に実りある経験でもありました。これらの体験は、私の視野を広げ、文化的多様性への理解を深めてくれました。日本における私の学術的旅路は、専門的にも個人的にも、変革をもたらす経験となりました。私は、この機会を与えてくださったフィリピン南東大学、東北大学、そしてミンダナオ-日本科学技術プログラムに心から感謝しています。私は、学び得た知識を活かしてミンダナオの発展に貢献するとともに、私たちの地域間の絆をより強固なものにしていきたいと強く願っています。