フェルナン・エルナン・A・ラモス(植物病理学研究の進展:フィリピンから日本へ)

フィリピン東南大学 農学部及び関連科学部 農学科/
広島大学大学院 統合生命科学研究科 生命環境科学プログラム

フィリピンにおける研究テーマ

学士と修士課程の研究において、筆者はフィリピンにおける主要な農業生産物であるキャベンディッシュバナナの植物病害管理に焦点を当てた。学士論文「Moko病及びキャベンディッシュバナナのフザリウム萎凋病の管理におけるアーバスキューラ菌根及びトリコデルマ・ハルジアナムの組み合わせにおけるMasinag OLF + Hermosaの有効性」では、バナナ生産に対する二つの重大な脅威を軽減するための統合病害管理戦略を探求した。

修士論文「キャベンディッシュバナナのブラック・シガトカ病を引き起こすミコスファエレラ・フィジエンシスに対する塩基性塩化銅、塩化ベンザルコニウム、及びKWR葉面散布肥料の生物学的有効性」では、この壊滅的な葉の病気によってバナナの収量と品質が低下することに対し、化学的及び生物的防除資材の有効性を調査した。

広島大学における研究テーマ

広島大学においては、土壌伝染性病原体に対する持続可能な病害管理戦略の開発に焦点を当てている。博士論文は、「白紋羽病菌に対する微生物処理及び熱水処理の相乗効果制御に対する窒素系土壌改良剤の影響」に関するものである。農業生産における土壌伝染性病害の蔓延は、特に果樹のような多年生作物に対する重大な課題となっている。化学的制御手法はしばしば環境問題や病原体の薬剤耐性発達を引き起こす。

本研究は、植物病原性真菌の生存性及び土壌微生物群集に対する熱水処理の影響を評価することを目的としている。更に、微生物媒介による病原体抑制の強化におけるアミノ酸肥料の役割の解明、圃場条件下でのこの処理の長期的有効性の評価を目指す。先行研究では、温水処理が土壌温度を致死レベルにまで上昇させることにより土壌病原体を効果的に低減することが示されている。しかしながら、処理後の病原体の再発が依然として懸念事項である。研究は病害抑制における土壌微生物叢の重要性も強調しており、有機土壌改良剤が有益な微生物相互作用を強化する可能性を示唆している。

本研究は、合成殺菌剤への依存を低減する統合的病害管理戦略の発展に貢献するものである。本研究は、コントロールされた条件下における病原体抑制の評価のための実験室及びモデル・システムによる検証、熱水処理の有効性と持続可能性を評価するための圃場試験、ならびに熱水処理土壌中の微生物群衆の変化を特定するための分子解析を含む予定である。本研究の期待される成果には、効果的な病害抑制のための最適な熱水処理条件の特定、病原体制御に寄与する微生物相互作用に関する洞察の獲得、ならびに白紋羽病に対する実用的かつエコフレンドリーな管理戦略の発展が含まれる。

フィリピン・ミンダナオへの利点

白紋羽病は土壌伝染性病害であり、ミンダナオは数千ヘクタールのプランテーションに壊滅的な被害をもたらしているキャベンディッシュバナナのフザリウム萎凋病に類似した課題に直面している。本研究から得られた知見は、フザリウム萎凋病防除のための開発モデルとして機能し得る。知識の移転及び協働を通じて、いくつかの知見は植物病害の課題に対応するために適応され得るものであり、同地域の農業部門の持続可能性と回復力を確保する。熱水処理や有用な微生物を支援する土壌改良剤といった自然な方法を用いることで、ミンダナオの農民はより多くの作物を生産し、環境をより良く保護することが可能となる。

受給者からのメッセージへはこちら