三輪理事長の熱帯果実加工工場訪問
2025.05.295月29日、三輪芳明理事長はダバオ地域の熱帯果実(tropical fruits)加工工場を視察し、カカオ、パイナップル、マンゴなどの熱帯果実がジュースなどに加工される過程で発生する残渣及びその活用状況等につき視察しました。本件視察は貿易投資省第11管区(NEDA Region XI)の斡旋により実施されたものです。
1. BARBCO訪問:カリナン地域
BARBCO(Biao Agrarian Reform Beneficiaries Cooperative)はカカオ産業振興のため設立されたものの、カカオ価格低迷などのため1990年代に活動を停止した国営企業「フィリピン・カカオ・ステーツ・コーポレーション(Philippine Cocoa State Corporation)」の元従業員が、農地改革の受益者(Agrarian Reform Beneficiaries)として土地分配を受け、1992年に設立した農業協同組合です。当初、BARBCOはラカタン種バナナの生産をしていましたが、その後、カカオ事業を再開、現在では地元の有力な農業事業者としてカカオの生産・販売、カカオリカー及びチョコレートなどを生産しています。現時点において、組合員数は266名で、その多くがダバオ市及びダバオ・デ・オクシデンタル州の農家です。
BARBCOは北米及び欧州の企業からも評価されており、BARBCO担当者は「フィリピンはカカオの生産量では世界市場におけるビッグ・プレーヤーではないが、質の面では潜在性を持っている」としています。カカオ生産の過程で発生する残渣などは、有機肥料やビネガーの生産に利用されています。


2. DAVECO-ARB訪問:カリナン地域
DAVECO Agrarian Reform Beneficiaries Cooperative(DAVECO-ARB)は1995年にDavao Agricultural Ventures Corporation(DAVCO)の元従業員やパイナップル農園労働者などにより、従業員の土地の取得を目指して設立されたもので、設立初期の主要事業は組合員に対する小口融資や土地改革プログラム(Comprehensive Agrarian Reform Program:CARP)に基づく土地リースなどでした。その後事業を多角化し、2008年にパイナップル加工事業を開始しパイナップルを使用したジュース、ジャム、ワイン、ビネガーを販売しており、学校向けパイナップルジュースも生産しています。1日で約500キログラムのパイナップルを加工した場合に発生する廃棄物(果皮)は約50~70キログラムで、家畜飼料として無償提供の照会もあるとのことですが、現在は廃棄物として処理されています。


3. シェチェム・マーケティング社
シェチェム・マーケティング社(Shechem Marketing)は2015年に設立されたダバオ市トリル地区に拠点を置く企業で、Belle’s Refreshing Juiceという果実・野菜による無添加のナチュラル・フレッシュジュースを生産しています。当初は3種類のジュースを製造していましたが、現在では製品のラインアップは12種類となっています。最も人気があるのは、日本でも馴染みのある、マンゴ、パイナップル及びスイカの他、グアバの4種類のフルーツから作られる「フォーシーズンジュース」とのことです。グアバの葉には機能性成分であるポリフェノールが含まれています。Belle’s Refreshing Juiceで使用されている、日本では比較的知られていないフルーツには、パッションフルーツ(passion fruit)、カラマンシ(calamansi)、グヤバノ(guyabano)などがあります。また、ノンカフェインのココナツ・コーヒーも生産しています。
シェチェム・マーケティング社はジュース生産の過程で発生する廃棄物を、マンゴ、ニンジン、グヤバノなどのフルーツや野菜ごとにビネガーにして販売しています。同社によると、廃棄物のビネガーの材料としての活用は、廃棄物処理費の大幅な節約に繋がったとのことです。

