MJ-STeP 理事長
本年2月にMJ-STeP理事長に就任いたしました三輪芳明です。
私は外務省で長らく勤務をしてきましたが、2019年から2022年までの3年間はダバオ初代の総領事として務めました。その後、2022年から2024年までの約3年間、在ソロモン日本国大使を務めたが、これまでの在外勤務を通じて痛感したことの一つに学術研究交流の重要性があります。一般に、相補的で互恵的な研究者間の協力関係が2国間で成立すると、そのような協力関係は長続きし、順調に進捗れば協力の幅も拡大することが期待されます。そのような長期に亘る協力関係は2国間関係において重要な一角を占めることになるでしょう。
2022年のロシアによるウクライナ侵略により、ポスト「冷戦後」の時代が語られるようになりました。2023年6月に改訂された「開発協力大綱」は「自由で開かれた国際秩序及び多国間主義は重大な挑戦にさらされ、国際社会の分断のリスクは深刻化」しているとしていますが、私たちはどのようにして私たちの地域で平和と安定を確保していけばよいのでしょか。世界を取り巻く情勢が難しいくなる中、先ず私たちが行うべきことの一つはアジア・太平洋地域の諸国が協力してそれぞれの足場を固め、互いに平和と繁栄のための取組みを行っていくことでしょう。
私はダバオとソロモンにおける勤務を通じ、日本が戦後、そして、ポスト冷戦期においてこれらの地域で実施してきた協力、すなわち、インフラ建設、能力構築、地球規模課題などの様々な分野で行ってきた協力が極めて高く評価されていることを改めて感じました。MJ-STePは、日本らしい協力の流儀に則り、科学技術の振興とイノベーションを通じた産業育成の分野に焦点を当てた貢献していきたいと考えています。
日本とフィリピンは地域における重要なパートナーです。日本にとり、ミンダナオは、戦前約2万名の日本人が居住していたダバオが所在することもあり、縁の強い地域です。広大な沃野、様々な資源、増大する人口に恵まれたミンダナオには将来の発展に向けた大きな潜在性を持つ地域です。残念ながらルソンやビサヤ地域などと比較するとミンダナオ地域への日本企業進出が比較的限られていますが、この地域への日本企業の関与を強化することは、日比両国にとり大きな意味があると考えます。
イノベーションを通じた産業育成のために重要なのは社会実装で、この分野で日本企業には、ミンダナオで活躍する余地が大いにあります。MJ-STePは、日・ミンダナオ大学間共同研究の促進と併せ、これに関連する技術と経験を持つ日本及びミンダナオの企業が参画することが出来るようすることで産学連携を図ります。MJ-STePは、中央び地方政府機関とも協力して産官学連携の枠組みを構築し、ミンダナオにおける持続可能な社会・経済発展に貢献します。ミンダナオの持続可能な発展のために重要な要素は平和と安定です。MJ-STePはミンダナオ和平の促進のために意味ある貢献をしたいと考えています。
また、ミンダナオでMJ-STePの事業を立ち上げ、その足場を固めた後には、ソロモンをはじめとする太平洋島嶼諸国においても同様の取組みを行い、日本、フィリピンをはじめとするASEAN諸国、太平洋島嶼諸国が連携・協力する枠組みの構築に貢献していきたい所存ですので、皆さま方よりご支援とご協力を賜ることが出来ますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
MJ-STeP理事長
三輪芳明
2025年5月
理事長経歴
1990年12月 | 外務省入省 |
2001年 4月 | 在フィンランド日本国大使館 一等書記官 |
2005年 1月 | 外務省大臣官房警備対策室 課長補佐 |
2007年 9月 | 外務省大臣官房警備対策室首席課長補佐 |
2008年11月 | 在イラク日本国大使館 一等書記官 |
2010年 7月 | 在フィンランド日本国大使館 一等書記官 |
2015年 8月 | 在フィンランド日本国大使館 参事官 |
2016年 1月 | 在フィンランド日本国大使館 公使参事官 |
2016年 9月 | 外務省大臣官房警備対策室長 |
2018年 2月 | 在ダバオ領事事務所長 |
2019年 1月 | 在ダバオ日本国総領事館 総領事 |
2022年 5月 | ソロモン国駐箚特命全権大使 |
2025年 1月 | 外務省退職 |
2025年 2月 | MJ-STeP理事長 |

MJ-STeP 事務局長
このたび、MJ-STeP(Mindanao-Japan Science and Technology Program)の事務局長を務めることとなりました三輪豊明と申します。設立以来、私たちの活動に対して多くの皆様からご理解とご支援を賜っておりますこと、心より御礼申し上げます。
MJ-STePは、科学技術を基盤とした地域社会の発展を支援することを目的として、2021年に設立されました。特に、フィリピン・ミンダナオ地域において、科学技術分野の研究振興、産官学の連携によるイノベーションの社会実装、そして持続可能な社会・経済の発展に貢献することを使命として活動しております。
ミンダナオは、多様な文化、豊かな自然資源、そして高い成長可能性を有する地域です。私たちは、この地域の人々の知見と意志を尊重し、対話と協働を通じて、内発的な発展を支える持続可能な仕組みづくりに取り組んでいます。
私自身は、1995年に株式会社アビタスを創業し、26年間にわたり米国の会計教育・ビジネス教育プログラムを日本のビジネスパーソンに提供する仕事に携わってまいりました。アビタスを通じて米国公認会計士(USCPA)資格を取得された卒業生は7,000名を超え、多くの方が国際的な舞台で活躍されております。教育は人を育て、社会を変える力を持つ──その信念をもって、MJ-STePの活動にも取り組んでおります。
教育と科学技術は、長期的な経済成長の基盤であり、持続可能な発展の鍵を握るものです。 MJ-STePでは、まず最初のステップとして、ミンダナオ地域出身の若手研究者が日本の大学で博士号を取得するための奨学金制度を設けました。2025年7月現在、5名の研究者が科学技術分野において日本の大学で学び、将来は地域課題の解決に貢献する人材としての成長が期待されています。
今後は、ミンダナオと日本、さらには国際社会の大学・研究機関との共同研究の推進や、地域産業との連携を通じた技術の実用化に力を入れてまいります。科学技術を活用して生産性の向上や産業の多様化を図ることで、地域の経済基盤をより強固なものにすることが私たちの願いです。
MJ-STePの活動は、私たちの努力だけでなく、多くの皆様との信頼関係とご支援の上に成り立っています。今後とも、皆様の温かいご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
MJ-STeP事務局長
三輪 豊明
2025年5月
事務局長経歴
1988年4月 | 大和証券株式会社入社 本社事業法人本部勤務 |
1989年8月 | ユニデン株式会社入社 米国、香港、中国など海外にて勤務 |
1995年7月 | 株式会社U.S.エデュケーション・ネットワーク(現、株式会社アビタス)設立 カリフォルニア州立大学イーストベイ講師兼任 |
2012年1月 | 株式会社東京中央日本語学院 代表取締役社長 及び 校長就任 |
2021年11月 | 一般社団法人MJ-STeP設立 |
2022年8月 | 株式会社アビタス・株式会社東京中央日本語学院 代表取締役社長退任 |
資格 | 米国公認会計士(ワシントン州、グアム登録) |
